大使からのメッセージ

八木毅

モディ首相の訪日

インドのナレンドラ・モディ首相は8月30日から9月3日まで日本を公式訪問しました。モディ首相は5月26日に就任後、域内ではブータン、ネパールを訪問し、ブラジルでのBRICSサミットに出席しましたが、域外の最初の二国間訪問として日本を選択したものです。

今回の訪日では、モディ首相は東京に先立って、京都を訪問しました。京都到着の8月30日には、京都迎賓館で安倍晋三総理大臣主催の非公式夕食会が行われ、また、両首脳は翌31日には、そろって東寺を視察しました。これは両首脳の間の強い個人的きずなを表していると思われます。京都ではモディ首相は、このほかに金閣寺視察、京都大学iPS細胞研究所訪問、京都市関係者との会談等を行い、日本の文化、伝統と、これらを活かした近代化・開発への強い関心を示されました。

東京では、天皇陛下御引見、安倍総理との首脳会談及び総理主催晩餐会をはじめとして、閣僚や政党代表による表敬、経済団体主催昼食会、日本経済新聞・JETRO共催講演会、日印協会・日印友好議員連盟主催歓迎行事など、非常に充実した日程となりました。

9月1日の首脳会談では、政治・安全保障、経済・経済協力、人的交流・学術交流、地域情勢、グローバルな課題を含む幅広い議論が行われました。いくつかのポイントを例示的に紹介すると、政治・安全保障分野では、①日印外相間戦略対話と防衛相会談の年内実施、②防衛装備協力についての事務レベル協議の開始、が合意されました。経済分野では、①日本の直接投資額及び進出日系企業数を今後5年以内に倍増するという共同で達成すべき目標を設定し、②安倍総理は、官民の取組により今後5年間で、ODAを含む3.5兆円規模の投融資を実現するとの意図を表明し、③これに対しモディ首相は、税制や行政規制、金融規制を含むビジネス環境の更なる改善の決意を表明する、といった成果がありました。人的交流・学術交流については、留学生数の大幅増加、日本語教育の推進、科学技術協力の抜本的強化、スポーツ交流の強化等で一致を見ました。会談後,両首脳は「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」と題する共同声明に署名しました。これまでの「戦略的グローバル・パートナーシップ」が「特別な」戦略的グローバル・パートナーシップへと強化されたこととなります。

 今回の訪問を通して、モディ首相は、「21世紀はアジアの世紀と言われるが,それがどのような世紀になるかは日印及び日印関係によって決まる」ということを繰り返し強調していました。日本に対する強い親近感と信頼、高い期待とが感じられます。

 新しいインドの首相の最初の訪問ということで、日本国内の関心も非常に高いものがあり、各種行事も大変盛況でした。モディ首相は盛り沢山の日程を非常に精力的、エネルギッシュにこなし、評判通りの「仕事師」振りでした。また、各所でのスピーチ、挨拶はインドにおけると同様、原稿なしで、しかも大変に雄弁に行いました。さらに、京都、東京の双方で観光客や一般の市民の方々に積極的に歩み寄り、言葉を交わす光景が頻繁に見られました。首脳会談をはじめとする訪日の内容面での成果に加えて、こうした行動によって、モディ首相は内外に大変強い印象を与えたものと考えます。

今回のモディ首相訪日によって、日印関係に大きなはずみが得られました。今後も、この関係の更なる発展をはかるべく、皆さまとともに力を尽くしてまいりたいと存じます。

駐インド日本国特命全権大使
八木毅





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