トブゲー・ブータン首相の訪日
在インド日本大使館は在ブータン大使館も兼轄しています。今回はブータンとの関係での最近の動きにつきご紹介します。
6月29日から7月3日まで,ツェリン・トブゲー・ブータン首相がタシ・ドマ同令夫人と共に実務訪問賓客として訪日しました。これまでのブータン首相の訪日はすべて非公式な訪問でしたが,昨年7月に首相に就任したトブゲー首相による今次訪日は,日本とブータンの国交樹立(1986年)以来初めてのブータン首相の公式訪問となりました。同首相の滞在中,皇太子殿下が同首相夫妻を御接見になったほか,日・ブータン首脳会談,安倍総理夫妻主催夕食会が行われ,林農林水産大臣,甘利経済再生担当大臣,木原外務大臣政務官,田中JICA理事長,石毛JETRO理事長等による表敬も行われました。
日・ブータン首脳会談では,幅広い分野で両国関係を一層強化することが確認され,政治,経済,文化等,二国間関係を議論するための外務省局長級協議の立ち上げが合意されました。経済協力については,安倍総理より,本年は対ブータンODA50周年であること,日本がこれまでに供与した約3千台の耕耘機が,ブータンの農業開発に大きく貢献してきたことに言及し,今後も,農業や基礎インフラ分野を中心に支援を継続していく旨を表明しました。これに対し,トブゲー首相は,日本の農業分野の支援に深い感謝の意を表明しつつ,この分野でのさらなる支援を期待する旨述べました。また,トブゲー首相より,環境保護及び輸入石油資源からの脱却の観点から,電気自動車の普及を図りたいとの説明があり,安倍総理は,日本の官民で何ができるか検討してみたいと述べました。
国際場裏での協力については,安倍総理より,「積極的平和主義」の下,日本は地域及び国際社会の平和と繁栄にこれまで以上に積極的に寄与していく考えであることを説明しました。これに対し,トブゲー首相からは,日本の国際場裏における貢献を高く評価している旨,またブータンとしても,国際法の原則に基づく紛争の平和的解決が重要と考えている旨の発言があるとともに,日本が国連安全保障理事会の常任理事国となることをブータンとして支持している旨述べました。
また,トブゲー首相一行は,7月2日に福島県相馬市を訪問しました。東日本大震災後の2011年11月に国賓として訪日したブータン国王王妃両陛下が相馬市を訪問され,被災者のために祈りを捧げられたことをご記憶の方も多いと思いますが,今回,トブゲー首相一行は国王王妃両陛下と同じ経路を辿って,相馬市立桜丘小学校や海岸に面した原釜地区を訪問しました。桜丘小学校では飛び入りで英語のクラスに参加し,児童と共にけん玉などを楽しんだ他,原釜地区の慰霊碑においては,チベット仏教の作法に則って,読経の中,祈りを捧げました。
今回のトブゲー首相の訪問は,日・ブータン関係の進展に大きな成果があっただけでなく,福島への訪問を通じて,日本人の心に訴えるものとなったと思います。今後も,伝統的親日国であるブータンとの関係をさらに強化していくよう努力していく考えです。
駐インド日本国特命全権大使
八木毅
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