大使からのメッセージ

八木毅

天皇皇后両陛下は平成25年11月30日から6日間にわたり、 インドを御訪問になり、12月6日、つつがなく御帰国になりました。

両陛下はデリー及びチェンナイにおいて、ムカジー大統領、シン首相をはじめとするインド政府要人、日印関係者及び文化・芸術関係者の方々から、手厚く、しかも温かいおもてなしを受けられました。インド政府による厚遇振りは異例とも言えるものであり、大変にありがたいことと思っています。具体的にいくつか申し上げれば,デリー御着に際してはシン首相夫妻が自ら空港にて両陛下を出迎えられました。また、両陛下のお供をする接伴大臣にはクルシード外務大臣が任命されましたが、同大臣は、両陛下が皇太子同妃両殿下として54年前に御訪印になり、ビハール州を御訪問になった際、同大臣の祖父であるザキール・フセイン州知事(当時。後の第3代インド大統領。)が両陛下をお迎えし、当時7歳だったクルシード大臣もそのときのことをよく覚えていると聞いています。この他にも、両陛下御訪問準備のためにアシュワニ・クマール前法務大臣が首相特使に任命されたこと、両陛下の御訪問を記念して、東京タワーとクトゥブ・ミナールが並んでそびえ立つという素晴らしい絵柄の記念切手がインド政府により発行されたことも忘れることができません。

両陛下はデリーではロディー庭園、チェンナイではギンディー国立公園内児童公園で、インド市民との交流を楽しまれました。ロディー庭園では在留邦人も含めて300人近くの方々が集まって下さいました。デリーのネルー大学やチェンナイのタミル・ナド障害者協会への御訪問も含めて、両陛下は、一人一人に丁寧にお言葉をかけられましたが、こうしたお姿は多くのインド国民の心に響くものではなかったかと感じています。

在留邦人の皆さまには、デリーあるいはチェンナイでのいろいろな行事に出席いただきました。中には数時間かけて駆けつけた方々もおられたと伺っています。また、デリーでもチェンナイでも、両陛下御到着時に、宿舎前に多数の邦人の方々が日の丸の手旗を持って歓迎に出てくださいました。沿道で手旗あるいは垂れ幕を持って歓迎された方々に、両陛下は車内からお手を振ってこたえておられました。また、デリー日本人学校の児童生徒による和太鼓の演奏と「よさこいソーラン踊り」はすばらしいパフォーマンスで、両陛下も大変楽しまれたご様子でした。御訪問が皆さまにとって励みとなるものであったと信ずるとともに、ご尽力いただいた在留邦人の皆さまに心からお礼申し上げます。

今回の両陛下によるインド御訪問は、個別の分野を越えた広い二国間関係全体の観点から、日印両国の友好親善関係、特に戦後の60年余りの友好、中でもここ10年余りの急速な関係緊密化を象徴するものとなりました。今回の御訪問を契機に、両国の友好親善関係の一層の発展をはかるべく、皆さまとともに力を尽くしてまいりたいと存じます。


駐インド日本国特命全権大使
八木毅