離任のご挨拶

令和4年9月28日



 この度、駐イタリア日本国特命全権大使を拝命し、9月末に離任する運びとなりました。
 
 インドでの駐在期間は2年11か月に及びましたが、その期間の多くが新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、インド政府によるロックダウン措置もあいまって在留邦人の皆様と対面で交流できる機会を十分に持てなかったことを残念に思います。そのような中でも最近では、インドにおける新規感染者数に上下の波こそあれ、国内の状況は次第に落ち着きを取り戻しつつあり、在留邦人の皆様と大使館の交流や日印間のビジネスの流れが次第に回復に向かっていることを喜ばしく思います。離任に当たりまして、在留邦人の皆様の一層の御発展と御活躍をお祈りしますとともに、在留邦人の方の日本への一時待避や在留邦人の方を対象としたPCR検査事業等において、皆様の御支援、御協力をいただきましたことに対し、心より御礼申し上げます。また、日印間のビジネス活動が停滞を余儀なくされる中であったにもかかわらず、1952年の日印平和条約締結から70周年を迎えた本年、インド各地で日印国交樹立70周年事業が実施されるとともに、日印両国企業関係者の皆様の善意に支えられ、実行委員会主催事業に対し多くの協賛金をお寄せいただいたことについても、この機会をお借りして改めて厚く御礼申し上げます。
 
 新型コロナウイルス感染症の影響を大きく被った約3年の駐在期間でしたが、そのような中であっても政治・安全保障及び経済・開発分野等における日印間の絆が一層に深まり、両国の協力関係が止まることなく前進したことを嬉しく思います。例えば、日印間で初となる外務・防衛閣僚会合(「2+2」)の開催、日・インド物品役務相互提供協定(日印ACSA)の署名・運用、日米豪印(QUAD)首脳会合の実施等、政治・安全保障面での協力が更に進みました。経済面では、今年3月の岸田総理訪印の際に、官民合わせて対印投融資を5兆円とする目標が発表されました。高速鉄道プロジェクトも土木工事が開始され、大きく前進しました。人的交流分野では、ポストコロナを見据えた将来のインドからの特定技能外国人受入れに向け、二国間の協力覚書に署名しました。今後も更に、官民で日印間の協力が進展することを期待しています。
 
 在任中、限られた機会でしたがインドの地方都市にも足を運び、両国の深い絆を目の当たりにする機会をいただきました。コロナ禍の影響がなければもっと多くのインドの人々と交流できたのではないかと感じるところもございますが、日印関係の節目となる国交樹立70周年にインドで勤務できたこと自体意義深いことであり、発展を遂げる日印関係の一翼を担うことができたことを喜ばしく思います。皆様が今後再び健やかで充実した日々を送ることができますことを、また、日印関係が皆様の善意と希望、将来に向けられた期待の下で今後も着実にその歩みを続けていくことを切に願っております。
 

令和4年9月
 
駐インド日本国特命全権大使
鈴木哲