大使からのメッセージ


日印国交樹立70周年を迎え節目となる令和4年の年頭に当たり、新年の御挨拶を申し上げます。
今日、戦略的パートナーとして、二国間のみならず、地域的、国際的な課題に対して緊密かつ重層的に協力する日印両国の友好関係は、70年前の1952年から始まりました。戦後の日本にとって最優先の課題であった国際社会への復帰をインドが一貫して支持してくれたことが両国の友好の礎です。インドは、日本の国際社会への復帰に当たっては、名誉と平等な立場が確保されるべきとの考えから、サンフランシスコ講和条約には署名せず、日本と個別に平和条約を締結することを選びました。1952年4月28日、両国は正常な外交関係を樹立する書簡を取り交わし、その後、同年6月9日に両国間に平和条約が締結されました。両国はその後70年をかけて、揺るぎない信頼関係を構築しました。
昨年も世界中が新型コロナウイルスに翻弄されました。特にデルタ株の影響を最初に受けたインドの感染によるインパクトは甚大でしたが、そのような中でも、信頼関係に裏付けられた日印両国の協力は着実に進展しました。
昨年、両国の首脳間では、対面を含め4回の会談が行われ、日米豪印の枠組みでも首脳会談が行われました。海上自衛隊とインド海軍の定期的な共同訓練など、安全保障面での協力は確実に進展しています。経済面では、日本政府は「産業競争力パートナーシップ」により、インドによる自国製造業の強化の取組を支援しています。社会的インフラ整備の分野では、デリー、チェンナイ、ベンガルールでのメトロ事業、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業の土木工事の着工、「日本式ものづくり学校」8校の開設、新型コロナウイルスに対するワクチン接種体制を構築するためのコールドチェーン整備事業など、インド各地において日印間の協力案件が成果を結んでいます。日本が建設に協力したヴァラナシ国際協力コンベンションセンターの開所式にはモディ首相が出席し、日本への深甚な感謝の意が述べられました。人的交流の分野では、ポストコロナを見据えて特定技能労働者制度に関する二国間の協力覚書に署名しました。
特に、日本とインド北東部との協力関係は特筆すべきものです。日本政府とUNDPの協力による北東部三州における医療用酸素プラントの設置、アッサム州とメガラヤ州を結ぶ橋の起工式も行われました。日印両国政府は、引き続きインド北東部地域の開発に協力していきます。
日印国交樹立70周年事業は、「Building a future for our Centenary」というテーマの下で行われます。70周年の更にその先の100周年に向けて、共に未来を作っていこうというメッセージが込められています。コロナ禍によって停滞を余儀なくされた分野を含め、今年一年を日印両国の協力関係を一層強化するための機会としたいと考えています。既に多くの企業・団体の皆様から様々な形で御協力頂いていることに感謝を申し上げます。未来の日印関係の更なる発展を思い描きつつ、両国にとって、両国の国民にとって、友情と信頼を更に深める年となるよう、ぜひ皆様と協力していきたいと思います。
今年も新型コロナウイルスとの闘いは続きます。在留邦人の皆様の安全のため、これまでにインド各地の日本人会、日本商工会、航空会社、医療サービス提供会社の関係者を始め、多くの方々が懸命に取り組んでこられたことに敬意を表します。
日本大使館といたしましては、在留邦人の皆様との緊密な連携の下、皆様の生活の安全のため、また、企業の皆様が思いきり事業に取り組んでいただけるよう、引き続き全力で取り組んでまいります。
日印国交樹立70周年という節目となる本年が、両国にとってより良い年になるよう、そして皆様にとって実り多い一年になるよう祈念しております。
令和4年 元旦
駐インド日本国特命全権大使
鈴木 哲