天皇誕生日に際しての大使からのメッセージ

Ambassador Suzuki

令和3年の天皇誕生日をお祝い申し上げるとともに、御挨拶を申し上げます。

この一年、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態が、日本とインドを含む世界全体に甚大な影響を及ぼしました。

本年1月1日のメッセージの中で、天皇陛下は、この一年、私たちが、新型コロナウイルスという、今の時代を生きる私たちのほとんどが経験したことのない規模での未知のウイルスの感染拡大による様々な困難と試練に直面してきたこと、世界各国で、そして日本でも多くの方が亡くなられたことに触れられつつ、医師・看護師を始めとした医療に携わる方々が、大勢の患者の命を救うために、日夜献身的に力を尽くしてこられていることに深い敬意と感謝の意を表されました。また、私たち人類が、これまで幾度も恐ろしい疫病や大きな自然災害に見舞われてきたこと、しかし、その度に、団結力と忍耐をもって、それらの試練を乗り越えてきたことにも触れられました。

インドにおいても、多くの方が新型コロナウイルスの犠牲になられたことは痛ましい限りです。インド在住の邦人の皆様の中にも感染された方がありました。インドにおいて、医療従事者を始め様々な方々が、新型コロナウイルスから人々の命を救うために日夜懸命に働いていることに心からの敬意を表します。

コロナ禍の下での日本とインドの関係を振り返ってみると、数多くの日本企業関係者が日本への退避を余儀なくされ、二国間の協力関係に影響がありました。我々日本大使館では、在留邦人の皆様の安全確保に最優先に取り組みつつ、二国間関係を少しでも前進させるための取組も進めてまいりました。この間に実現した成果の例として、日・インド物品役務相互提供協定(ACSA)の署名、インドに対する新型コロナウイルス危機対応のための支援に関する交換公文の署名、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業における最大の土木パッケージ(C-4)の契約署名・建設工事開始、両国間における初の包括的な情報通信技術分野における協力覚書への署名、「特定技能」に係る制度の適正な運用のための連携の基本的枠組みに関する協力覚書の署名などが挙げられます。さらに、東京において第2回日米豪印外相会合が対面式で開催された他、これに続いて日米豪印による海上共同訓練(マラバール2020)が実施されました。これらは未曽有の危機においても協力を止めることのない日印両国の強固なパートナーシップの証左です。

来年、日印両国は国交樹立から70周年を迎えます。この70年の中間点に当たる1987年に、今上天皇陛下がインドを御訪問になり、デリーの他、アグラのタージマハルやアジャンタの石窟寺院等を御訪問されました。その後の日印関係は飛躍的とも言える目覚ましい発展を遂げ、今や両国のパートナーシップは、二国間関係のみならず、国際社会のあらゆる分野に及んでいます。そして、更に大きな発展の潜在性を秘めています。

新型コロナウイルスの感染状況はまだまだ予断を許しませんが、感染対策に万全を期しながら、人の交流の分野を含め、日印間のパートナーシップを一層強化し、更なる高みを目指していくために引き続き力を尽くしていく所存です。

天皇陛下は、人々が将来への確固たる希望を胸に、安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んで行くことを心から願っていると述べられました。このお言葉を胸に、在留邦人の皆様、インドの友人の皆様と共に、日印関係の更なる発展に向けて、歩みを進めていきたいと思います。

令和3年2月23日

駐インド日本国特命全権大使
鈴木 哲



◯ 天皇陛下のインド御訪問(1987年)当時のお写真


(提供元:読売新聞社)

◯ 天皇陛下のおことば:新年ビデオメッセージ
 https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/86
(出典:天皇陛下のおことば 新年ビデオメッセージ(令和3年1月1日) 宮内庁ウェブサイト)

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