私がインドに着任し、丁度一年となりました。これまで多くのインドの方々と会い、友情を育んできました。これらの方から日本に対する善意と尊敬の念が示されていることは、大変嬉しいことです。
日印関係が大きく花開き、新たな時代を迎えていることを日々実感しています。日本とインドは、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有しています。また、歴史的にも文化的にも多くの共通項があります。これが日本とインドの関係の基礎です。その上で相互に補完する経済、投資関係を飛躍的に発展させてきました。
首脳間の信頼関係も極めて強固です。モディ首相は安倍総理が最も信頼する首脳の一人です。3度の年次首脳会談を含め計8回の首脳会談を重ねています。私も何度か首脳会談に同席させて頂いていますが、戦略面も含めこれだけ率直に意見交換が出来る首脳は例を見ないと思います。
11月10日~12日にモディ首相が訪日されましたが、日印原子力協定署名、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道建設に関するロードマップの公表等、着実な日印関係深化を、目に見えるかたちで示すことができました。私は着任以来、結果を出す外交ということを申し上げてきましたが、これが実現しつつあると感じています。
日印は、単なる二国間関係を超え「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を有しています。今やインドは、不安定な地域情勢や大きな転換点を迎えつつある世界情勢に対応するための不可欠なパートナーです。安倍総理の「自由で開かれたインド太平洋戦略」とモディ首相の「アクト・イースト政策」が共鳴し、地域の連結性、海における法の支配の重要性などの戦略眼の共有も進んでいます。南西アジア、アフリカをはじめとする第三国における日印協力に係る議論も進展しています。また、互いが国際社会でより重要な役割を果たすべきである点を認め合い、国連安全保障理事会改革の分野でも緊密に協力しています。
在インド日本国大使館は、このように極めて高い水準にある日印関係を更なる高みに導くことを目指し、日々精力的に活動しております。私自身も、頻繁に閣僚をはじめとする政府ハイレベルと意見交換を行い、日印の戦略的協力の重要性を訴えつつ、民間企業の皆様が抱える税制面やインフラ面の問題、邦人の生活、安全に係る問題等について改善を求めています。また、着任した2015年12月以来12の州及び2つの連邦直轄領の州知事や州首相等と、経済・開発面の協力深化について意見交換を行ってきました。
しかし、日印関係にはまだまだ発展の余地があります。特に人的交流の分野での取組は課題です。現在、日本からインドへの旅行者が年間約20万人、インドから日本への旅行者は年間約10万人ですが、とても少ないと言わざるを得ません。インドの方々に対するビザ要件の緩和や日本の魅力を広報していくことでこれを大きく拡大できればと思っています。この観点から、2017年を日印の観光・文化交流を一層深化させる年と位置づけ、様々な取組を実施していく予定です。国民レベルの相互理解を通じて、日印の「近さ」を国民の皆様にも実感していただきたいと思います。
私を含む在インド日本国大使館員は、今後も、日印関係の重層的発展、日本企業の更なる活躍、そして大使館の最大の使命でもある邦人の安全確保に向けて全力で取り組む所存です。今後とも皆様と一緒になって前向きに成果を上げていきたいと思いますので、宜しく御願いします。
駐インド日本国特命全権大使
平松賢司

平松駐インド大使からのメッセージ (平成28年5月)
平松駐インド大使からのメッセージ (平成28年1月)
平松駐インド大使からのメッセージ (平成27年12月)
八木毅前駐インド大使のメッセージ
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