I. |
日本の対インド直接投資(FDI)
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1 |
「日本の対インドFDIは、2005~07年の3年間で18億ドル以上になる」 |
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・邦字紙報道分の集計のみで、3年間累計で、22件2,100億円(18億ドル)以上、年平均 700億円(6億ドル)以上になる。 |
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・さらに、投資額未公表7件、検討中案件、今後の新規案件などを勘案すれば、
FDI額は2,400億円(20億ドル)以上に達するものと見込まれる。 |
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・過去の年間最高投資額は1997年の5億ドル超であったので、今後3年間の年間平均6 億ドルは新たな対印投資ブームを意味する。 |
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・具体的な投資案件は別表1.の通り。代表的な大型案件例(企業グループ)は以下の通り。 |
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マルチ・スズキ |
800億円(7億ドル) |
三菱化学(MCC
PTA) |
430億円(3.7億ドル) |
ホンダ |
290億円(2.5億ドル) |
トヨタ |
150億円(1.3億ドル) |
旭硝子 |
150億円(1.3億ドル) |
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2. |
「インド国別FDI統計は、ダイナミックな日本企業のFDI動向を反映せず」
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・インド国別FDI統計(商工省)では、日本の対インドFDIは、1997年5億ドル超をピ ークに漸減し、2003年には1億ドル以下(75百万ドル)にまで低下している(別表2. 参照)。
この間、世界の対印FDIも150億ドルから13億ドルに急減しており、日本 の投資動向は、世界の動向に平行している。 |
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・かかる統計は、旺盛な対印投資動向の実態と乖離している。その理由は、統計上のFDI 定義にある。 |
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・即ち、インドのFDI統計は、2001年まではフレッシュ・マネー(equity
capital)のみを 計上していたが、2002年に定義を改訂し、"reinvestment earnings" 及び "inter-company
debt"をも計上するようになった。 |
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・しかるに、かかるFDI定義の改訂は「世界の対印FDI全体」統計のみであり、国別統 計には反映されず、フレッシュ・マネーのみの計上となっている。 |
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・日本の対印FDIの80%を占める自動車(60%)及び石油化学(20%)は、1980年代進出 のスズキ自動車を除き、概ね1997年前後にインド進出をしている。これら投資企業は、 現在、事業の拡張期に当たり、内部留保による再投資(reinvestment
earnings)が中心になっている。従って、日本の対印FDIは、構造的に、特に投資実態と印国別統計の乖離が大きくなり、インドの統計はダイナミックな日本企業のFDI動向を反映していない。
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3. |
「近年、FDI対象分野の多様化傾向が見られる」 |
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・自動車、石油化学以外の製造業分野(YKK, サカタ・インク、ヤンマーなど)及び医 薬品(エイザイ)、ITソフト(日立、NEC)、食品加工(ヤクルト、ロッテ)など投資 対象分野が様々な領域に拡大してきている。 |
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・また、近年、中小企業のインド市場への関心も高まってきており、このためJETROは06 年2月に中小企業中心の経済ミッションをインドに派遣する予定。
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II |
証券投資
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「Sensex高騰を支えるのは日本の対印証券投資、年間47億ドル」 |
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・日本のインド株投信残高は、05年11月で5,467億円(47億ドル)。 |
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・日本のインド株投信の開始は04年9月。従って、投信残高が、即、過去1年間のジャ パン・マネーの流入額と考えてよい。 |
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・日本に関係するインド株投信一覧は別表3.の通り。04年9月にPCAインド株投信が
最初に設定されてから、05年6月の野村投信まで、半年余りの間に6本の投信が立て 続けに設定されている。加えて、ルクセンブルグ経由の投信2本が日本で発売されている。 |
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・同時期の世界の対印証券投資総額統計(ネット)は未発表なるも、04年4月~05年3月 の1年間では100億ドル弱。日本の対印証券投資が圧倒的なシェアを有していることは 疑いなく、現在のSensex高騰の主要因の一つがジャパンマネーの流入にあることは明らか。
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III |
貿易
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1. |
「日印貿易拡大の鍵は製造業分野での対印FDI」 |
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・日印貿易往復額は、1998年41億ドルから2004年50億ドルへと、6年間で20%強の伸 びに止まっており、期待通りの発展をしていないのは事実。但し、2000年(36億ドル) を底にして近年増加傾向にあり、今後の大きな伸びが期待されている。 |
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・従来の伝統的な貿易構造(日本の対印輸入の54%は、ダイヤモンド、エビ、鉄鉱石の3 品目)のままでは急速な拡大には限界あり。 |
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・鍵を握るのは、製造業分野での対印FDI拡大による部品、完成品貿易の拡大。特に、 生産拠点海外移転機能の高い中小企業の積極的進出が期待される。その意味で、現在の 対印FDIの活発化は二国間貿易拡大への貢献要因となる。
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2. |
「二国間貿易統計に現れない日・ASEAN・インドの3角貿易」 |
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・日本はASEANに製造業拠点ネットワークを構築済み(累積ベースでは、日本の対 ASEAN・FDIは対中国の3倍)。加えて、インド・ASEAN間FTA網の整備により、日本企業は、インド・ASEANを一つの市場として海外事業戦略を展開している。 |
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・従って、日印の直接取引とともに、ASEANを経由した日・ASEAN・インドの3角貿易が大きな比重を有して来ている。しかも、実態は、在ASEANと在インドの日本企業間 の取引が多い。2004年操業開始のトヨタ系部品製造会社(バンガロール)が製品100%をASEAN所在のトヨタ現地法人に輸出しているのは、この典型例。
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3. |
「在印日系企業は、インドの輸出にも貢献している。」 |
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・4輪ではマルチ・スズキ、2輪ではホンダ・グループ(HMSI及びヒーロー・ホンダ)の輸出貢献度が著しい。 |
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・2004~05年度については、マルチ・スズキは国内販売数42万台に対し、輸出4.8万台と 10%以上の比率に達している。また、ホンダ・グループ2輪は国内販売数3百万台に対し輸出は10万台になっている。いずれも、近年、急速に輸出台数が増加している。
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IV |
インドにおける日本企業プレゼンス |
1. |
「延べ対印進出日系企業数は、03年8月231社から06年1月328社まで、2年半の間に100社、50%増となっている」 |
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・延べ進出日系企業数の推移
03年8月 231社、04年7月 276社、05年4月 298社、06年1月 328社 |
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・日系企業インド進出地図は、別表4.の通り。
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2. |
「日本経済界の対印関心の高さを反映して、この半年間だけでも12件(参加延べ人数350人)の大型経済ミッションが訪印」 |
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・訪印経済ミッションの内訳は別表5.参照。 |
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(了) |