What's New Japan-India Relations

「急速に拡大する日印経済関係」

Jan 10, 2006
在インド大使館

日印経済関係は、1991年のインド経済自由化以降、1997年まで順調に伸びた後、2002年までの数年間、停滞期を経験した。この間、インド側には、日本はインドの経済的実力を認めようとはせず、インド市場進出に消極的であるとの認識が広まった。
しかるに、2003年以降、日本経済界においては対インド関心が急速に高まり、対インド投資が活発化している。今や、日印経済関係はかってなかった程の発展期に突入しようとしている。この資料は、日印双方の関係者に先入観を離れて正確に事実を認識していただけるよう、活況を呈する日印経済関係の現状及び今後3年間程度の展望をまとめたものである。


I.

日本の対インド直接投資(FDI)


1

「日本の対インドFDIは、2005~07年の3年間で18億ドル以上になる」

  ・邦字紙報道分の集計のみで、3年間累計で、22件2,100億円(18億ドル)以上、年平均 700億円(6億ドル)以上になる。
  ・さらに、投資額未公表7件、検討中案件、今後の新規案件などを勘案すれば、  FDI額は2,400億円(20億ドル)以上に達するものと見込まれる。
  ・過去の年間最高投資額は1997年の5億ドル超であったので、今後3年間の年間平均6 億ドルは新たな対印投資ブームを意味する。
  ・具体的な投資案件は別表1.の通り。代表的な大型案件例(企業グループ)は以下の通り。
 
マルチ・スズキ 800億円(7億ドル)
三菱化学(MCC PTA) 430億円(3.7億ドル)
ホンダ 290億円(2.5億ドル)
トヨタ 150億円(1.3億ドル)
旭硝子 150億円(1.3億ドル)

 

2.

「インド国別FDI統計は、ダイナミックな日本企業のFDI動向を反映せず」

 

  ・インド国別FDI統計(商工省)では、日本の対インドFDIは、1997年5億ドル超をピ ークに漸減し、2003年には1億ドル以下(75百万ドル)にまで低下している(別表2. 参照)。 この間、世界の対印FDIも150億ドルから13億ドルに急減しており、日本 の投資動向は、世界の動向に平行している。
  ・かかる統計は、旺盛な対印投資動向の実態と乖離している。その理由は、統計上のFDI 定義にある。
  ・即ち、インドのFDI統計は、2001年まではフレッシュ・マネー(equity capital)のみを 計上していたが、2002年に定義を改訂し、"reinvestment earnings" 及び "inter-company  debt"をも計上するようになった。
  ・しかるに、かかるFDI定義の改訂は「世界の対印FDI全体」統計のみであり、国別統 計には反映されず、フレッシュ・マネーのみの計上となっている。
  ・日本の対印FDIの80%を占める自動車(60%)及び石油化学(20%)は、1980年代進出 のスズキ自動車を除き、概ね1997年前後にインド進出をしている。これら投資企業は、 現在、事業の拡張期に当たり、内部留保による再投資(reinvestment earnings)が中心になっている。従って、日本の対印FDIは、構造的に、特に投資実態と印国別統計の乖離が大きくなり、インドの統計はダイナミックな日本企業のFDI動向を反映していない。

 

3. 「近年、FDI対象分野の多様化傾向が見られる」
  ・自動車、石油化学以外の製造業分野(YKK, サカタ・インク、ヤンマーなど)及び医 薬品(エイザイ)、ITソフト(日立、NEC)、食品加工(ヤクルト、ロッテ)など投資 対象分野が様々な領域に拡大してきている。
  ・また、近年、中小企業のインド市場への関心も高まってきており、このためJETROは06 年2月に中小企業中心の経済ミッションをインドに派遣する予定。

 

II

証券投資

 

  「Sensex高騰を支えるのは日本の対印証券投資、年間47億ドル」
  ・日本のインド株投信残高は、05年11月で5,467億円(47億ドル)。
  ・日本のインド株投信の開始は04年9月。従って、投信残高が、即、過去1年間のジャ パン・マネーの流入額と考えてよい。
  ・日本に関係するインド株投信一覧は別表3.の通り。04年9月にPCAインド株投信が 最初に設定されてから、05年6月の野村投信まで、半年余りの間に6本の投信が立て 続けに設定されている。加えて、ルクセンブルグ経由の投信2本が日本で発売されている。
  ・同時期の世界の対印証券投資総額統計(ネット)は未発表なるも、04年4月~05年3月 の1年間では100億ドル弱。日本の対印証券投資が圧倒的なシェアを有していることは 疑いなく、現在のSensex高騰の主要因の一つがジャパンマネーの流入にあることは明らか。

 

III

貿易

 

1. 「日印貿易拡大の鍵は製造業分野での対印FDI」
  ・日印貿易往復額は、1998年41億ドルから2004年50億ドルへと、6年間で20%強の伸 びに止まっており、期待通りの発展をしていないのは事実。但し、2000年(36億ドル) を底にして近年増加傾向にあり、今後の大きな伸びが期待されている。
  ・従来の伝統的な貿易構造(日本の対印輸入の54%は、ダイヤモンド、エビ、鉄鉱石の3 品目)のままでは急速な拡大には限界あり。
  ・鍵を握るのは、製造業分野での対印FDI拡大による部品、完成品貿易の拡大。特に、 生産拠点海外移転機能の高い中小企業の積極的進出が期待される。その意味で、現在の 対印FDIの活発化は二国間貿易拡大への貢献要因となる。

 

2. 「二国間貿易統計に現れない日・ASEAN・インドの3角貿易」
  ・日本はASEANに製造業拠点ネットワークを構築済み(累積ベースでは、日本の対   ASEAN・FDIは対中国の3倍)。加えて、インド・ASEAN間FTA網の整備により、日本企業は、インド・ASEANを一つの市場として海外事業戦略を展開している。
  ・従って、日印の直接取引とともに、ASEANを経由した日・ASEAN・インドの3角貿易が大きな比重を有して来ている。しかも、実態は、在ASEANと在インドの日本企業間 の取引が多い。2004年操業開始のトヨタ系部品製造会社(バンガロール)が製品100%をASEAN所在のトヨタ現地法人に輸出しているのは、この典型例。

 

3. 「在印日系企業は、インドの輸出にも貢献している。」
  ・4輪ではマルチ・スズキ、2輪ではホンダ・グループ(HMSI及びヒーロー・ホンダ)の輸出貢献度が著しい。
  ・2004~05年度については、マルチ・スズキは国内販売数42万台に対し、輸出4.8万台と 10%以上の比率に達している。また、ホンダ・グループ2輪は国内販売数3百万台に対し輸出は10万台になっている。いずれも、近年、急速に輸出台数が増加している。

 

IV インドにおける日本企業プレゼンス
1. 「延べ対印進出日系企業数は、03年8月231社から06年1月328社まで、2年半の間に100社、50%増となっている」
  ・延べ進出日系企業数の推移
03年8月 231社、04年7月 276社、05年4月 298社、06年1月 328社
  ・日系企業インド進出地図は、別表4.の通り。

 

2. 「日本経済界の対印関心の高さを反映して、この半年間だけでも12件(参加延べ人数350人)の大型経済ミッションが訪印
  ・訪印経済ミッションの内訳は別表5.参照。
 
                                           (了)
別表 1 別表 2 別表 3 別表 4 別表 5