平成26年3月31日
インドに対する円借款に関する書簡の交換について




1. 日時・場所
2014年3月31日、於インド財務省


2.署名者
当方:八木毅駐インド特命全権大使
先方:ラジェシュ・クッラーインド財務省経済局長

3.対象案件(総額2,519億6,600万円)

 本日、日印政府は、2,500億円を超える以下の5案件について交換公文に署名した。1度の署名としては、日本のODA史上最高額の署名である。エネルギー分野の3案件(新・再生可能エネルギー支援計画、中小零細企業・省エネ支援計画、ハリヤナ州配電設備改善計画)は、経済及び社会発展の促進にとり非常に重要なものであり、また、他の2案件(デリー高速輸送システム建設計画、アグラ上水道整備計画)は、一般市民へ直接恩恵をもたらすことを目的としたものである。なお、(1)~(3)については、本年1月25日の安倍首相とマンモハン・シン首相の首脳会談において、円借款供与の意図表明が行われたものである。この円借款の署名は、グローバルパートナーシップを掲げる日印関係をより高い次元に引き上げるものである。

(1) デリー高速輸送システム建設計画(フェーズ3)(第二期)(1,488億8,700万円)

日本政府が、これまで5,027.17億円の資金サポートを行っている日印協力の旗艦事業であるデリー・メトロについて、交通機能の更なるレベル向上のために新たに1,489億円の借款を供与するもの。今回の事業では、放射線状に発展した既存路線(約190㎞)を追加の環状線((6路線6区間:約116㎞))で連結して、発展が進む郊外のノイダ地区とインディラ・ガンディー国際空港を結ぶ環状線や、市内中心部の中央官庁街(セントラル・セクレタリアト)からデリー門、ラール・キラーを通りカシミール門までを結ぶ通称遺跡線(Heritage line)等の整備がすすめられる。この事業により、デリー・メトロは総延長329.4kmとなり、東京メトロに匹敵する世界水準の都市交通システムになる。

(2) 新・再生可能エネルギー支援計画(フェーズ2)(300億円)

インド再生可能エネルギー開発公社(IREDA)を通じて、発電事業者等に対し,太陽光や風力発電を含む新・再生可能エネルギーの開発プロジェクトを行うための資金を新たに300億円供与する、フェーズ1からの継続プロジェクト。本プロジェクトにおいては事業費総額116億ルピーのアンドラプラデシュ州、グジャラート州、カルナタカ州における風力発電プロジェクト、総額約22億ルピーのアンドラプラデシュ州における太陽光発電プロジェクトなどが実施されている。インドは2012年末時点で世界第5位の風力発電導入国であり、政府発表の第12次5か年計画(2012-2017)では太陽光を含む再生可能エネルギーのさらなる導入促進を目指している。本計画はインドの持続可能な発展に対する日本の支援の方針に沿ったものである。

(3) 中小零細企業・省エネ支援計画(フェーズ3)(300億円)

インド小企業開発銀行(SIDBI)を通じて,インドの2000の中小零細企業に対し,省エネルギーの設備投資に必要な資金を最大300億円まで低利で融資する。この資金ファシリティは、インドの中小零細企業が、世界最先端の日本企業の省エネ設備を含めたエネルギー効率の高い機器をリスト化したEnergy Saving Equipment Listに記載されている機材を低コストで導入できるようにする。インドはエネルギーの利用効率が日本に比較し5倍以上悪く、本計画は同効率の改善によるインドのエネルギー不足解消に資するものである。

(4) ハリヤナ州配電設備改善計画(268億円)

日本政府はインドの電力セクターにおいて73件、1兆944億円の資金サポートを行ってきている。このハリヤナ州での268億円の電力セクターでの新しい日印協力は、ハリヤナ州全21地区に、4,359kmの新たな配電線、約150カ所の変電所新設及び増設、63,000台の自動検電設備、1,705,000ヶ所のメーターを供給する。このプロジェクトは、地域の変電設備の容量を1,905MVA増加させ、配電ロス率を最大30%改善する。このことにより、地域の企業及び住民は、劇的に安定化、効率化された電力供給を享受する。このプロジェクトはインドの最も成功したビジネス地の一つであるグルガオンやマネサールを擁するハリヤナ州のインフラ整備と、そこに急激に増加する日本企業の操業及び将来にわたる更なる投資にも貢献する。なお、ハリヤナ州を拠点とする日系企業は2014年1月時点で325社であり、インド国内ではタミル・ナドゥ州、マハラシュトラ州に次ぐ第3位である。

(5) アグラ上水道整備計画(Ⅱ)(追加借款)(162億7,900万円)

2007年から事業を開始している「アグラ上水道整備計画」につき、資材高騰等による事業費増加に対応するために追加で円借款を供与し、アグラ市及びその周辺地域向けの導水施設の建設、アグラ市の既存の上水道施設の改修・拡張等を行い、貧困層を含む同地域の住民の生活環境の改善を図るもの。アグラ市は世界遺産タージマハルを擁する世界的な観光地である事から、本計画により、同市を訪れる多くの観光客に対する裨益も見込まれる。