インド赴任・旅行前に受けておきたい予防接種
(平成26年6月10日改定)
インド赴任やインド旅行の前には、以下の各予防接種をご検討ください。予防接種は渡航前に規定回数の接種を完了しておくことが望ましいですが、完了せずにインドに渡航する場合でも、一時帰国した際、もしくはインドの信頼できる医療機関で忘れないように残りの予防接種を受けてください。
インドでは、日本脳炎ワクチンの接種は受けられませんが、他のワクチンについては、国際的に信頼されているブランドのワクチンが多く流通しており接種を受けられます。
| A型肝炎 | B型肝炎 | 破傷風 | 日本脳炎 | 腸チフス | 狂犬病 | ポリオ※ |
インド赴任者 | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ | ◯ | X |
インド旅行者 | ◎ | △ | △ | △ | ◎ | △ | X |
(注意)推奨される予防接種については、専門家によって意見が異なる場合があります。 |
◎:インド赴任の際に、是非接種を受けていただきたいもの
◯:インド赴任の際に、接種が望ましいもの
△:目的地や旅行の形態に合わせて検討すべきもの
X:不要なもの
※ 2011年以降、インドでは野生型ポリオによる新規感染者がなく、2014年3月にWHOはインドをポリオ清浄国に認定しました。このような背景から、インド国内でポリオに感染するリスクはないと考えてよく、インド赴任に際してポリオの予防接種を追加する必要はないと考えられます。ただし、インド赴任者でパキスタンの都市への4週間以上の出張等が想定される場合には、パキスタン出国の際に1年以内のポリオワクチンの接種証明の提示を求められる可能性があります(平成26年6月10日現在)ので、最新の情報を入手してください。
【A型肝炎】
通常、1歳以上で接種を検討します。過去にA型肝炎に感染したことがある人や、過去にA型肝炎の予防接種を受けていて抗体価が有効域にある場合は接種不要です。
国産A型肝炎ワクチンでは、2~4週間隔で2回接種し、24週後に3回目を接種します。追加接種の時期については具体的に示されていませんが、一般的に3回接種すれば5年程度は効果があると考えられています。
海外製A型肝炎ワクチンは2回接種で、米国疾病センター(CDC)は、基礎免疫(2回接種)後の追加接種は推奨しないとしています。海外製ワクチンでは、B型肝炎との混合ワクチン(3回接種)や腸チフスとの混合ワクチン(2回接種)もあります。B型肝炎との混合ワクチン(3回接種)では、21日間で3回の接種を済ませてしまう短期接種スケジュールも認められています。
インドでも、各地で接種を受けることができます。都市部の総合病院や小児科では、HAVRIX(GSK社)、AVAXIM(Sanofi Pasteur社)やTWINRIX(GSK社のA・B型肝炎混合ワクチン)等が使用されています。
【B型肝炎】
日本の予防接種法では定期接種に入っていませんが、世界の多くの国で小児の定期接種に組み入れられており、出生直後から接種が開始されています。
国産B型肝炎ワクチンでは、4週間隔で2回接種し、20~24週後に3回目を接種します。3回接種しても抗体価が上昇しない人がいることが知られています。追加接種の時期については具体的に示されていませんが、一般的に3回接種すれば5年程度は効果があると考えられています。
海外製B型肝炎ワクチンは3~4回接種で、米国疾病センター(CDC)は、基礎免疫後の追加接種は推奨しないとしています。A型肝炎の項で説明したように、A型肝炎との混合ワクチン(3回接種)もあります。
インドでも、各地で接種を受けることができます。都市部の総合病院や小児科では、ENGERIX B(GSK社)、TWINRIX(GSK社のA・B型肝炎混合ワクチン)等が使用されています。
【破傷風】
日本を含む世界の多くの国々で小児の定期予防接種に組み入れられています。日本では、1968年、三種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳)が小児の定期接種として開始され、2012年からは四種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳、ポリオ)が導入されています。
破傷風は日本国内でも毎年数例が報告されており、特に40歳代以降で抗体価が低下するため、たとえ日本にいるとしても10年ごとの追加接種が推奨されます。
破傷風ワクチン(トキソイド)は、3~8週間隔で2回接種し、初回投与の6ヶ月以降(標準として12~18ヶ月後)に3回目を接種します。
インドでは、インド製の破傷風ワクチン(トキソイド)や、BOOSTRIX(GSK社の追加接種用三種混合<破傷風、ジフテリア、百日咳>ワクチン)、ADACEL(Sanofi Pasteur社の追加接種用三種混合<破傷風、ジフテリア、百日咳>ワクチン)等が使用されています。
【日本脳炎】
インド東部や南部で、散発的な流行がしばしば報告されています。日本では3歳になってから基礎免疫を開始しますが、インド赴任に乳幼児を帯同する場合には、生後6ヶ月から接種をお勧めします。
国産日本脳炎ワクチンでは、1~4週間隔で2回接種し、その1年後に3回目を接種します。基礎免疫後、約10年で抗体価が低下することが知られており、10年ごとの追加接種が推奨されます。
インドでは信頼のできる日本脳炎ワクチンが手に入りません。基礎免疫を行う場合、計画的に赴任前に3回接種を済ませるか、2回接種していったんインドに赴任し、1年後に休暇などで日本に帰国した機会に3回目の接種を受けてください。
【腸チフス】
CDCによれば、南アジアでは他の地域の6~30倍、腸チフスの感染リスクがあるとされています。特にインドでは、しばしば在留邦人や日本人旅行者が腸チフスに感染しており、国立感染症研究所の2012-13のデータでは、日本で確認された腸チフスはほとんどが海外で感染し、感染国で最も多かったのがインド(36%)でした。
腸チフスワクチンは感染防御効果が50~80%と必ずしも他のワクチンと比べて高くありませんし、類縁細菌によるパラチフスには効果がありませんが、 近年、腸チフス菌の治療に用いる抗菌薬に対する耐性獲得が問題となっていることからも、インド渡航の際には腸チフスワクチンの接種を勧めます。
腸チフスワクチンは海外製のみで、日本では輸入ワクチンとして限られたトラベルクリニック等で接種を受けることができます。腸チフスワクチンには、大きく分けて弱毒生ワクチン(1日おきに3~4回カプセルを内服)と不活化(多糖体)ワクチン(1回注射)の2種類があり、弱毒生ワクチンは5~6歳以降、不活化(多糖体)ワクチンは2歳以降接種が可能となります。また、A型肝炎の項で説明したように、A型肝炎との混合ワクチン(2回接種)もあります。
インドの医療機関では、不活化(多糖体)ワクチンである、TYPHIM Vi(Sanofi Pasteur社)やTYPHERIX(GSK社)、インド製のTYPBAR(Bharat Biotech社)が使われていますが、近年メーカーの自主回収のため、TYPHERIX(GSK社)は流通していません。
【狂犬病】
WHOによれば、インドは世界で最も人の狂犬病報告数が多い国です。インドでは宗教的背景から、デリー、グルガオンやムンバイのような都市部であっても、人々は牛や犬のような動物と共存し、野良犬や野生の猿もあちらこちらで見かけます。インドで長期間生活していく中で、これらの動物と完全に距離を置いて生活を送ることは容易ではありません。
狂犬病ワクチンでの予防には、事前にワクチンを接種して免疫をつけておく曝露前免疫と、犬などに咬まれてしまってからワクチンを接種する曝露後免疫があります。WHOの推奨では、曝露前免疫を受けていない人が犬などに血が出るほど咬まれた場合、ヒト狂犬病免疫グロブリン(HRIG)という医薬品を創部の周囲など複数箇所に注射することになっています。お子さんの場合、創部の周囲にHRIGの注射を受けることは、耐えがたい恐怖と疼痛だと思いますし、HRIGは血液製剤ですから、できれば投与を避けたいものです。また、最近、インドでは都市部の総合病院でも慢性的なHRIGの不足が報じられています。
このような理由から、インドに赴任する場合や、旅行でも野生動物と接触する可能性がある場合には、狂犬病ワクチンを用いて曝露前免疫を受けておくことが望ましいとしています。
国産狂犬病ワクチンを用いた曝露前免疫には、4週間隔で2回ワクチンを接種した後、6~12ヶ月後に3回目のワクチン接種を受けます。国産狂犬病ワクチンを用いた曝露前免疫を受けた場合、どれくらいの期間防御効果が持続するかについて、メーカー側の資料には明確な記述がありませんが、「1年から1年半は効果が期待できる」とする専門家※もいます。(※:「予防接種に関するQ&A集(2013年)」)
海外製狂犬病ワクチンを用いた曝露前免疫には、1週間隔で2回接種後、2回目接種から2週間後もしくは3週間後に3回目を接種します。CDCやWHOは、一般渡航者に対しては「追加接種は不要」としています。一方で、ワクチンの製造元によっては、「免疫効果を長期間持続させるため、3回接種の後1年目に1回追加接種し、以後5年ごとの追加接種を勧める」としています。
インドで日本国産狂犬病ワクチンは入手できません。インド国内医療機関では、RABIPUR(CHIRON社)やVERORAB(Sanofi Pasteur社)といった、国際的に知名度が高いワクチンが豊富に流通しています。

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