What's New Japan-India Relations:

「急速に拡大する日印経済関係Ⅱ」

2007年4月
在インド日本国大使館

     近年、日本の経済界においてインドに対する関心が急速に高まっている。日本貿易機構(JETRO)や国際協力銀行(JBIC)が行っている日系企業を対象としたアンケート調査では、中国に次ぐ投資有望国としてインドが注目されている。実際、日本のインドに対する海外直接投資は、2003年以降急速に拡大しており、インドに対する日系企業の進出も年々活発化している。

     当館では、2006年1月に急速に拡大する日印経済関係について実態をとりまとめた資料を作成した経緯がある。今回の資料は、最新のデータを加え、日印経済関係の現状と今後の見通しについて再度まとめたものである。

1.日本の対インド直接投資(FDI)

1-1.日本の対インド直接投資額は過去1年で倍増

     日本の財務省が発表している国際収支統計によると、日本の対インド直接投資額は、2005年の298億円(2.5億ドル)から2006年の598億円(5.2億ドル)にほぼ倍増した 。以下の表に示すとおり、2006年の日本の対インド直接投資額は、前回のピークであった1997年の591億円(4.9億ドル)を超え、過去最大の投資額となった。

表1:日本の対インド直接投資額/日本財務省資料

Net Inflows of FDI from Japan to India


* 印商工省が発表した資料においても日本の対印直接投資額は着実に増加していることが示されている。印商工省発表の資料には、新規投資のみが計上されていおり、再投資額を含めた実際の投資額より少ない金額となっている。

表2:日本の対インド直接投資額/インド商工省資料


日本の対インド直接投資額(百万ドル)
2003
94.4
2004
116.0
2005
168.0


* 日本企業は、以上の対インド直接投資額に加え、日本企業はインドに対し、第三国(主にシンガポール)を経由した直接投資を行っている。印商工省発行のSIA Newsletterに示された資料では、2006年4月~11月までのシンガポール経由の日系企業による対インド直接投資額は、約515万ドルであった。


1-2.日本の対インドFDIは、今後5年間で55億ドルに達する見込み

     2007年2月までの邦字紙報道分の集計によると、自動車産業を中心に2006年から2010年までの5年間累計で、27件55億ドル以上の投資が行われる見込みである。代表的な大型案件例は以下の通り 。

マルチ・スズキ3 3000億円 (25.64億ドル)
トヨタ自動車 450億円 ( 3.84億ドル)
三菱化学 426億円 ( 3.64億ドル)
日産自動車 270億円 ( 2.31億ドル)
ホンダ・シエル 205億円 ( 1.75億ドル)
旭硝子 130億円 ( 1.11億ドル)


2.日本の証券投資(FIIs)

     日本のインド株投信残高は07年3月時点で82億ドルであり、2005年11月時点の47億ドルに比べ、75%近い増となった。 また、日本国内で購入することのできるインド株投信の数は、2005年11月時点の8本から、2007年2月時点の16本に倍増した (表3参照)。


表3:インド株投信一覧


日本籍投信
純資産額(億円)
(現在)
純資産額(億円)
(前回調査時)
投資信託会社 ファンド名 As of 12 March, 2007 As of the end of
November, 2005
野村アセットマネジメント 野村インド株投資 1077 1172
新光投信株式会社 新光ピュア・インド株ファンド 722 -
JPモルガン・アセットマネジメント JFインド株ファンド 167 330
JPモルガン・アセットマネジメント JFインド株アクティブオープン 139 -
ドイチェ・アセット・マネジメント ドイチェ・インド株式ファンド 316 99
三菱UFJ投信 ドイチェ・インド株式ファンド 148 166
ブラックロック・ジャパン ブラックロック・インド株ファンド 1087 -
HSBC HSBCインドオープン 1209 822
Cアグリコル・アセットマネジメント CAりそなインドファンド 427 -
三井住友アセットマネジメント 三井住友・インド・中国株オープン 309 -
PCAアセット PCAインド株式オープン 1262 764
PCAアセット PCAインド・インフラ株式ファンド 629 -
新生インベストメント・マネジメント 新生・UTIインドファンド 283 -
  小計 7775 3353
 
外国籍投信 純資産額(億円)
(現在)
純資産額(億円)
(前回調査時)
投資信託会社 ファンド名 (2007年1月末現在) (2005年9月末時)
フィデリティ フィデリティ・ワールド・ファンズ-インド・
フォーカス・ファンド(ルクセンブルグ)
548 534
日興コーディアル 日興フィデリティ・グローバル・セレク
ション-インドアドバンテージ・ファンド
(ルクセンブルグ)
1291 1580
トレイダーズ UOBインディアン・エクイティ・ファンド
(アイルランド)
14 -
小計
1853 2114
総計
9628 5467
(出典:社団法人投資信託協会ウェブサイト、日本証券業協会ウェブサイト)


3.貿易

3-1.日本とインドの二国間貿易額は、最近4年間で倍増

     日本財務省発表のデータによると、日本とインドの二国間貿易額は、2003年以降着実に増加している。2006年の貿易額は、対前年比27%増、2002年時点からは2倍以上増加の、85.5億ドルに増加した。

表4:日印貿易額の推移、1998年~2006年/日本財務省資料


Trade between India and Japan, from 1998 to 2006

* 印日貿易の急速な拡大の要因は、輸出入双方向の貿易がともに順調に伸びたことにある(2006年は輸出入とも前年比26%以上の増)。特に顕著な動きは、インドから日本に対する石油化学製品の輸出が急速に拡大していることであり、2005年の5.4億ドルから2006年には11.3億ドルへと倍増し、伝統的な対日輸出品目である「宝石類」を抑え、インドの対日輸出品目の中で最も高いシェアを占める品目となった。一方、インドの日本からの輸入額も2005年から2006年の間に26.8%増加している。この増加は、日本のインドに対する主要な輸出品である機械、電子機器、輸送機械部品などの輸出が増加したことによる。

* 日本の直接取引とともに、ASEANを経由した日・ASEAN・インドの3角貿易も活発に行われている。具体的な統計数値は存在しないが、その実態は、在ASEANと在インドの日本企業間の取引が多い。2004年操業開始のトヨタ系部品製造会社(バンガロール)が製品100%をタイを中心とするASEAN所在のトヨタ現地法人に輸出しているのはこの典型例。
3-2.在印日系企業は、インドの輸出にも貢献

     最近、従来、国内市場を主眼に向いていた在印日系企業に輸出に向けた増資・増産の動きが顕在化しつつある。その主要産業である自動車産業の動向は以下の通り。
     マルチ・スズキ は2005年度、国内販売台数の6.6%にあたる3万5000台の自動車をアフリカや欧州向けに輸出した。更に、マルチ・スズキは、2005~2009年度の間に3000億円の投資を投入して、既存のグルガオン工場とマネサール新工場の立ち上げ・拡充を図り、国内向け乗用車の生産拡大とともに年間20万台の輸出体制を整える予定である。また、 ホンダグループ (ヒーローホンダ並びにHMSI)は、2005年度に二輪車国内販売台数の347万台に対し、13万1300台を輸出した。さらに、2007年1月にインドへの進出を発表した 日産自動車,
はインド国内で生産した完成車を将来的に欧州向けに輸出する予定である。かかる動きは、日本企業の一部がインドを輸出基地として捉えるようになっている質的変化の表れであり、今後在印日系企業は、インドの輸出増加にも益々貢献するものとを思われる。

4.インドにおける日本企業の活動拠点

     2007年2月における当館で把握しているインド全体の日本企業の活動拠点数は475拠点であった。また、複数の事務所などを整理した企業単位の数は362社であった(日系進出企業の所在地については別添資料を参照)。2003年8月から2007年2月までの拠点数の変遷は以下の通り。
2003年8月 231
2004年7月 276
2005年4月 298
2006年1月 328
2007年2月 475(*)


※ 2006年1月までの資料については、日本企業が資本参加しており、原則として日本人が常駐している拠点について計上していた(但し、一部プレゼンスの高い企業については日本人が常駐していなくても計上していた)。従来の定義に基づいた場合、2007年2月におけるインド全体の日本企業活動拠点数は、381拠点であった。

※ 一方、近年中小企業のインド進出が増加しており、日本人が常駐しない形での企業進出が増えているとみられることから、2007年2月の資料では、本邦企業の支店・駐在員事務所や生産工場、日本企業が資本参加する現地法人の本店等については、日本人が常駐していなくても計上することとした(新しい定義による計上数は94拠点と全体の約20%を占める)。

  1日本の外国直接投資の統計には、新規投資額の他に、再投資額、企業間借入額も含まれている。
  2邦字紙報道に基づく金額であり、必ずしも当該企業に直接確認した金額ではない。
  3マルチ・スズキについては、2005年度から2009年度の投資見込額。